読書の秋邁進中

個人的に「読書の秋」絶賛満喫中である。
求職活動中とはいえ (いいのか悪いのか)暇な時間も多いので 
ここ数年では考えられない程 映画を観に行ったりしているわけですが。
そういつも観たい映画があるわけでもないしね そうなると残るは読書。
未読なまま買ってある本が ゆうに100冊以上はあるので 金もかからんんしぃ。(笑)

で まずは 読みっぱなしで放ってあった 柴田よしき「求愛」から手に取る。
これは連作短篇集なんだけど 最初の一篇を読んだとこで投げ出していた模様。(汗)
しかし これが続きを読みだしたら めちゃくちゃ面白い。
主人公は翻訳を仕事にしている女性。 この女性が親友の死の謎を解いたことから
探偵になり 色々な事件に遭遇していくという。冷静に考えると 無理がある設定だけど
読んでる間は 全く気になりません ラストはちょっと弱いけどね。

柴田よしき(女性)さんは 知名度としてはどうなんだろうか。
俺は大好きな作家なんだけど 知り合いに貸した時 「この作家って男?」って
聞かれたことあるから まぁ その程度の知名度なんだろう。

で 本棚代わりの押し入れの天袋から ごっそり柴田よしき本を下ろして
片っ端から読むという荒業敢行。

朝顔はまだ咲かない」 ひきこもりの19歳の女の子が主人公の 
ほのぼの青春ミステリー連作短篇集。甘酸っぱさとほろ苦さが
絶妙にブレンドされていて かなり面白かったです。

「Close to You」 一組の夫婦が巻き込まれる誘拐事件の陰に蠢く
マンション内の人間関係の暗部が描かれる長編小説。
面白く読めるけど かなり無理が感じられるし 着地も完璧とは言えない。

「小袖日記」 紫式部の侍女の脳内にタイムスリップした現代女性が
源氏物語」の創作に関わるというユーモア・ミステリー連作集。
着想が面白いし ラストも文句なしにいい。「源氏物語」を読んだことがある
そういう人なら 更に面白さを感じられると思います。
読んだことない人(含む俺)でも 面白く読めます もちろん。

「好きよ」 今回読んだ 柴田よしき本の中で唯一の説明不可能本。
ネタバレになるから説明出来ないという意味でなく 本当になんと説明して
いいか分からないという意味での 不可能本。とりあえずタイトルから想像される
全てを裏切ってくれること間違いなし。もちろん 柴田よしきなので読ませます。
ただ 個人的には ダメでした。

「激流(上・下)」 修学旅行でグループ行動をしていたバスの中から消えた女生徒。
二十年後に事件が動き出す。結構な長編ですが一気に読めちゃいます。
ラストの犯人の心情が ちょっと理解しがたいものがあって 納得出来ない感じが
残ってしまったのが 残念ではありますが それ以外は完璧だと思います。

「PINK」 震災後の神戸を舞台に愛の再生を描いた長編ミステリー。
途中ちょっと怪しい(←俺が苦手な分野)方向に行きかけますが
それでも こういう女性の情念を描かせたら 柴田よしきは凄いです。
そこが苦手って人も多いかもしれませんが 俺は好きです。

「水底の森(上・下)」 風子(ふうこ)が逃亡を続ける理由とは?追いかける刑事と
交わる時 事件が一気に熱を帯びる。これも 一気読み必死です。
風子の過去が明らかになるにつれ 人間の卑しさ いやらしさみたいなもんが
露わになっていきます。凄−く面白いし 惹きつけられるんですが 
ラストは若干しょぼいです。そこが 超絶惜しいです。

で ここまで手当たり次第に読んで 突然飽きました 柴田よしきに。
まだまだ 柴田よしき本 たくさんあるんですけどねぇ 天袋に。

柴田よしきの本で一番好きなのは?
こんだけ まとめて読んでみたので考えてみた。
今回読んだ本も それぞれに面白かった。
だけど 一番っていうと 「ふたたびの虹」しかないと思う。
これは 結構繰り返し読んでいるんだけど 本当にいいです。
東京・丸の内にある小料理屋「ばんざい屋」を舞台に 女将の作る絶品料理と共に
小さな謎が解決されていくという 一冊で二度美味しい連作短篇集です。
こんな店があったら行ってみたい 誰もがそう思うに違いない
そんな世界が この小説の中に広がっています。

続編も出ているんですが 残念ながら まだ買ってないので
その気持ちのまま 北森鴻の「香菜里屋を知っていますか」を手に取ってみました。
北森鴻(きたもり こう)も 一般的にはそこまで知名度高くないのかなぁ?
俺は大好きな作家で その好き度で言ったら 柴田よしきも遥か圏外(大袈裟)って位に
北森鴻の方が圧倒的上位に君臨しています。それには理由があって そのひとつが
北森鴻が既に故人だからというのも大きいのかなぁと思います。
しかも それがキャリア絶頂ともいうべき2年ほど前の48歳という若さであったというのも
俺の中では かなり衝撃でして これ以上新作が読めないと思うと 必然的に
残された作品に対する愛が深くなる。そんな理由もあるんだと思います。
ただ そんなことは知らないで読んでも 北森鴻の作品は面白いです。

で この「香菜里屋を知っていますか」なんですが これは三軒茶屋にあるビアバー
香菜里屋を舞台に マスターの工藤が独特の感覚から考え出したオリジナルの
絶品肴と共に 常連客の持ち込む謎に独自の解釈から答えを導き出すという
連作短編シリーズの完結編に当たる本なんです。
「花の下にて春死なむ」「桜宵」「蛍坂」と続く この香菜里屋シリーズは
数多くのシリーズを抱えていた北森鴻の中でも一番の人気だったのではないか。
他のシリーズも 特徴があって 俺も大好きなものもあるんですが
この香菜里屋シリーズは 多分嫌いな人は少ない そういう意味でも一番人気と
言えるのではないかなぁと思います。
この本 文庫化と同時に買って持ってはいたんですが その時には作者は故人で
しかもシリーズ完結編ってのもあって 読んだら本当に終わりなんだと思うと
読みたいのに読めない感じになってしまっていて・・・。
今回 自然に手に取れたので読んでしまいましたが やっぱり残念な気持ちの方が
大きくなってしまいました。それは香菜里屋シリーズが もう読めないってのもあるけど
それ以上に 北森鴻の作品が読めないという喪失感なんだろうなぁ。
突然の死だったので 未完の作品もあるし 完結していないシリーズもあるので
そういう意味では香菜里屋シリーズは幸せなんだと思うけど 
それでもマスターの工藤の行く末は きっといつかは書きたかったと思うんですよねぇ。
ま 北森鴻作品も まだ未読多数なので 少しづつ大事に読んでいこうと思います。

で そのバー繋がりで 加納朋子の「掌の中の小鳥」を読んでみました。
「ばんざい屋」「香菜里屋」と比べると この作中に登場する「エッグスタンド」からは
絶品と言われるような料理が登場しないのは残念なとこだけれど・・・
ただ 日常の謎に対する推理の切れ味は結構鋭いので その点は負けず劣らずです。

さーて 次は何を読むかなぁ。